李強首相が9月下旬の国連総会に合わせて、中国が現行及び将来のWTO交渉において新たな「特別かつ差別的待遇」(SDT)を求めないことを表明した際、この声明は一見すると控えめな政策の明確化に思えた。しかしその背景には、中国の国際的役割だけでなく、多国間貿易ガバナンスの将来にも深い影響を及ぼす決定が潜んでいた。
その重要性を理解するには、SDTの意義を想起する必要がある。WTO枠組みにおいて、途上国メンバーには歴史的に優遇措置が与えられてきた。義務水準の緩和から実施のための長期移行期間、技術支援、貿易利益を守るための特別規定まで多岐にわたる。こうした柔軟性は、先進国と発展途上国の能力や発展段階の格差を認めつつ、競争条件を平等にするために設計された。中国は数十年にわたり、こうした取り決めの主要な受益国の一つであった。したがって、さらなる優遇措置を求めないという中国の決定は、象徴的にも実践的にも重大な意味を持つ。
2001年の中国のWTO加盟は、21世紀初頭における最も重大な貿易イベントであった。WTO加盟は北京のグローバル市場への統合を加速させ、サプライチェーンへの特権的アクセスを認め、輸出を拡大し、より市場志向の経済に向けた国内改革を促進した。この変革は中国の国境内に留まらなかった。世界市場を拡大し、消費財を低廉化し、インフレ圧力を緩和し、高度な越境生産ネットワークを創出することで、世界経済を再構築したのである。
1970年代後半の相対的孤立から、今日の世界第二位の経済大国かつ主要輸出国への中国の急成長は、途上国としての地位の下で保護と柔軟性を提供したWTOルールによって部分的に可能となった。この経済ブームは数億人の中国国民を貧困から脱却させ、インフラを近代化し、中国を世界経済の中核拠点として確立した。しかしこの台頭は同時に、貿易摩擦や不公正競争の非難、ハイブリッド経済へのWTO枠組みの対応能力をめぐる議論も引き起こした。
重要なのは、中国が新たな最恵国待遇(SDT)の譲歩を求めないことが、途上国としての地位を放棄することを意味しない点だ。北京は自国が依然として世界最大の途上国であると断固として主張している。経済規模の総量にもかかわらず、2024年の中国の一人当たりGDPは13,303ドルであり、米国の85,809ドルや欧州連合(EU)の43,145ドルのほんの一部に過ぎない。中国国内でも地域間格差が顕著で、沿海省は高い所得水準を享受する一方、内陸部は依然として未発達に苦しんでいる。
中国はまた、鄧小平の改革に端を発する概念である「社会主義の初級段階」に位置づけ、現代化が未完成であることを認めている。先進国と比べ、技術革新基盤、福祉制度、産業構造はいまだ不均衡な状態にある。この「発展途上国」としての自己認識は、政治的・経済的指標として機能し、北京がグローバル・サウスとの連携を継続する基盤となる一方、貿易交渉において完全な「先進国」としての責任を担うよう求める先進国からの圧力をかわす役割も果たしている。
ではなぜ、この局面で北京は追加の特別待遇(SDT)特権を放棄する選択をしたのか?この決定は三つの層で理解するのが最適である。
第一に、これは中国がポスト西洋的グローバル化のリーダーとして自らを位置づけたいという野心を反映している。特恵を辞退することで、北京は自らの経済力と、単に恩恵を受けるだけでなく、世界貿易ルールを形作る能力に対する自信を示している。ルールを受け入れる側ではなく、ルールを作る側として認識され、国際秩序における責任あるステークホルダーとしてのイメージを投影しようとしている。
第二に、中国はグローバル・サウス(途上国)の擁護者としての役割を固めようとしている。新たな特恵を自発的に放棄することで、北京は狭義の国家利益を超越した立場を強調し、この決定を発展途上国との連帯の証として提示している。新興経済国の声がより大きく反映される、多極的で包摂的な国際秩序の構築を主導することを目指しているのだ。
第三に、この動きは西側諸国への外交メッセージでもある。長年、ワシントンとブリュッセルは、国家補助、技術移転要求、産業政策を通じて貿易を歪めていると北京を批判してきた。中国のWTO決定は、妥協し既存の多国間枠組み内で行動する意思を示す融和的な姿勢である。これは米中が関税と広範な貿易関係について交渉中という微妙な時期に発表された。協調的な役割を演じることで、北京は緊張を緩和し、対立が不可避ではないことを示そうとしている。
WTO自体も苦境にある。保護主義の高まり、一方的な貿易措置、制度的機能不全が組織の有効性に疑問を投げかけている。こうした背景の中、WTOのンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長は、中国の発表を改革に向けた前向きな一歩として歓迎した。北京のこの動きは、多国間主義を守り分断に抵抗する、世界経済の安定化要因であるという中国の主張を補強するものだ。
この決定は、1か月前に発表された「グローバル開発イニシアチブ(GDI)」や「グローバルガバナンスイニシアチブ(GGI)」といった北京の広範な取り組みとも連動している。これらのプロジェクトは、開発・包摂性・実践的協力を優先する形で国際協力を再構築することを目指す。中国は自らの行動重視のアプローチをモデルとし、多国間ガバナンス構造強化に向けた積極的措置の採用を他国に促したい考えだ。
中国の主張の核心は、世界最大の途上国という自認にある。北京はこの地位が譲れないと主張し、特定の特権を放棄する一方で、このバランス感覚により中国は途上国のリーダーであると同時に仲間でもあると自らを位置づけている。
グローバル・サウスは西側優位やブロック政治に抵抗しつつ新たな協力形態を模索し、ますます主張を強めている。中国のモデル——世界とつながる市場社会主義——は近代化への代替経路として注目を集めている。具体的な行動がこれを裏付けている。2024年12月以降、中国は外交関係を持つ全ての後発開発途上国(現在44カ国)に対し、全品目100%の無関税待遇を適用。2025年6月にはこの政策をアフリカ53カ国に拡大した。こうした取り組みは、北京の連帯に関するレトリックが具体的な経済的インセンティブによって支えられていることを示している。
一帯一路構想や国連システム内の様々な南南協力プラットフォームといった枠組みを通じ、中国は西側主導のグローバル化で疎外されがちな国々に対し、近代化・主権・自立的発展の支援者として自らを位置づけている。広大な市場へのアクセス拡大、インフラ投資の提供、無関税貿易の促進により、北京は政治的影響力とソフトパワーを強化する長期的なパートナーシップを構築している。
中国のWTOにおける姿勢が特に注目されるのは、その二重の役割にある。一方で改革を主導し、多極化の現実と途上国の発展権を反映した世界貿易ガバナンスの変革を訴える。他方で現状維持に固執し、市場開放と単独行動主義抑制にWTOが不可欠と認識している。
この二重性により、中国は改革派と保守派の両方の役割を同時に果たすことが可能となる。すなわち、自らの台頭を正当化する多国間秩序を維持しつつ、それを再構築して西側の支配力を希釈するのだ。WTOとの連携を通じて、北京は国際機関を解体する意図はなく、より包括的で均衡のとれた秩序という自らのビジョンを反映する形で再調整する方針であることを強調している。
中国が新たな特別かつ差別的な待遇(SDT)規定を求めないとする発表は、単なる技術的な貿易政策転換をはるかに超える。これは中国の世界的役割の変遷——グローバル化の受益者としての発展途上国から、自らを改革の主導者かつ多国間主義の擁護者と位置づける存在へ——を凝縮したものである。この決定は、自国の発展への自信、グローバル・サウスを率いる野心、そして妥協する意思のある責任ある大国として認められることを望む姿勢を反映している。
しかし同時に、北京が直面するバランス感覚の難しさも浮き彫りにしている。先進国に迫る力を行使しつつ、途上国としてのアイデンティティを主張するという課題だ。WTOにとってこの動きは改革議論に弾みをつけ、多国間主義の将来への懐疑が広がる中で稀な前向きなシグナルとなる。グローバル・サウスにとっては、中国の庇護者・擁護者としてのイメージを強化する。欧米諸国にとっては、特権を要求する姿勢は弱まったものの、ゲームのルール形成において依然として強硬な姿勢を見せる中国と関わるという、挑戦と機会の両方をもたらす。
中国の今回の動きは物語の終わりではなく、グローバル貿易政治における新たな章の始まりである。そこでは、発展とリーダーシップ、妥協と野心、改革と継続性の境界線がますます曖昧になっていく。
本稿終了